1:お腹がグーグー
人をはじめ、あらゆる哺乳動物の小腸の入り口には、食べ物センサーがあります。食事が流れてこないと小腸は「モチリン」という消化管ホルモンを出します。このホルモンは、胃を収縮させることによって、まだ胃に残っているかもしれない食べ物を小腸に送り込ませようとします。これは、空腹期収縮といって「お腹グーグー」の正体です。
2:若返りスタート
モチリンで胃を絞り出しても、何も食べ物が流れてこなければ、空っぽの状態に気づいた胃袋から「グレリン」と言うホルモンが出ます。グレリンという名称の由来は英語の「grow」、つまり成長です。グレリンは、脳の視床下部に働いて食欲を出させるのが仕事です。と同時に脳の下垂体にも働き、成長ホルモンを分泌させます。この成長ホルモンは、「若返りホルモン」とも呼ばれます。グレリンはさらに、糖や脂肪を材料にエネルギー(ATP)を作る、ミトコンドリアを活性します。ミトコンドリアはの元気は、細胞の元気につながります。
3:サーチュイン遺伝子(修復)
サーチュイン遺伝子は「延命遺伝子」または「長寿遺伝子」とも呼ばれ、空腹の状態で活性し、体内の遺伝子をスキャンして、傷ついているところを修復し始めます。老化やがんも、遺伝子の異常が要因の一つと言われています。
長寿遺伝子の働きは、
①活性酸素の除去
②代謝のコントロール
③遺伝子の修復
④テロメアの安定化 などがあります。
4:内臓脂肪燃焼とアディポネクチン
体内に貯蔵されている糖であるグリコーゲンは、何も摂取しなければ約1日で消費される程度の量です(個人差はありますが、約300~約500g)。ファスティング時には、グリコーゲンを使用した後、脂肪がエネルギー源として使われていきます。その時、脂肪細胞から「アディポネクチン」というサイトカイン(細胞間情報伝達物質)が分泌されます。アディポネクチンは、身体中の血管を掃除するなど、身体にプラスの作用をもたらします。
5:脂肪の燃焼により、脂肪毒が放出される
脂肪の中は有害物質が潜みやすい場所です。したがって脂肪が分解されることは、その有害物質の排出につながります。さらに内臓脂肪からは、アディポネクチンとは反対の悪玉であるサイトカインが分泌されます。悪玉サイトカインの種類としては、炎症や糖尿病の原因になる「TNF−a」、高血圧の原因になる「アンジオテンシノーゲン」、血栓形成の原因になる「PAI-1」などがあります。
脂肪は、身体によって必要な皮下脂肪ではなく、内臓脂肪から先に分解されていきます。
6:ケトン対
ファスティングも2日目から3日目(個人差があります)くらいになると、「脳がスッキリした」「集中力が出てきた」というような体験をすることが多いのですが、この時、脳からはアルファ波が出ています。そしてその原因となるのが「ケトン体」なのです。
脂肪は体内では「中性脂肪」という状態で蓄積されています。脂肪をエネルギー源として使う場合は、中性脂肪が「グリセロール」と「脂肪酸」に分解されます。このうち脂肪酸が、エネルギー(ATP)源として、またはケトン体の材料となります。特に、脳は脂肪酸を直接エネルギー源に使うことができませんので、ケトン体はファスティング時の脳にとって貴重なエネルギー源となります。
7:デトックス
日常生活では、体内で作られる酵素の約80%は消化に使われると言われています。しかしファスティング時には消化酵素はほとんど使われないため、代謝酵素を有効に使うことが可能となります。この代謝の力により、細胞内に潜む有害ミネラル(水銀など)を排出し、体内を本来ある状態に戻していきます。
8:細胞の修復スタート
タンパク質は皮膚や筋肉、消化管ホルモンや酵素などに関わり、身体に欠かせないものです。細胞の中には「分子シャペロン」という特殊なタンパク質が存在し、体内で作られるタンパク質が正しく機能する形になるお手伝いをしています。また、不良品として作られたタンパク質の修復もしてくれます。
ファスティングなど飢餓状態、熱さ(暑さ)、寒さなどのストレスによって増えるのが分子シャペロンのひとつである、ヒートショックプロテイン(HSP)で、このHSPもタンパク質を修復し、細胞を保護する働きがあります。
9:肺をきれいにする
呼吸は生命にとって最も欠かせない活動ですが、ファスティングは肺の細胞を重複し、全身への酸素の運搬をスムーズにします。酸素が体内をきちんと循環することで、細胞を元気にするエネルギー(ATP)を作ることが可能になります。
10:腸内環境
腸は栄養を吸収するところで、植物でいうと根に当たります。根が腐るとどんな立派な大木も枯れていくように、腸の状態はその人の健康状態を左右します。腸内には約100兆個ともいわれる腸内細菌が存在し、善玉、悪玉、日和見の割合は2:1:7が理想とされています。排泄される便の成分は約7割が水分で、残り約3割の固形物は腸内細菌の死骸と食物残渣(食物繊維など)となっています。
当協会推奨のミネラルファスティングは、専用ドリンクの中に善玉菌のエサとなるプレバイオティクスを含んでいますので、善玉菌優位な腸内環境づくりの一助となります。ただし、腸内環境を保つには普段の食生活の改善は欠かすことができません。過食、動物性タンパク質、白砂糖などの過剰摂取は控えて、「マゴハヤサシイワ+玄米(雑穀米)」の穀菜食を中心とした食生活を意識しましょう。
全身の免疫力の約70%程度は腸管(小腸と大腸)に集中していると言われていますので、腸内環境の改善は免疫力にもつながります(※腸内環境については講義2の『腸内細菌について』を参照してください)
11:ファスティングの健脳効果
ニューロン
脳の機能は情報の伝達と処理を行う細胞「ニューロン(神経細胞)」によって支えられていまして、人間の脳には約860億個ものニューロンが存在していると言われています。脳のニューロンは胎児期に作られ、徐々に死滅すると言われていましたが、最近では年齢を重ねてもニューロンは増えていることが研究発表されました。こうしたニューロンの新生(神経発生)を刺激・制御するのをサポートする「BDNF」は最も重要な役割を担っています。
BDNF
BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)とは、日本語では「脳由来神経栄養因子」となります。生体タンパク質の一種で、中枢神経や末梢神経の特定のニューロン(神経細胞)に作用して、神経系幹細胞の分化・成長を促し、神経突起が伸展促進していくニューロンにとっての栄養となります。
脳内のBDNFが増加することは、脳内の神経伝達ネットワークの維持につながり、さまざまな健脳効果をもたらすといわれています。例えば、記憶力が向上する、うつ病が予防、または改善される(気力の向上)、食欲を抑制する(過食や肥満の抑制)などが挙げられます
そしてこのBDNFが増加する環境として、食事制限(適度な空腹時間の導入)、適度な運動習慣などが挙げられます。
ファスティングも同様にBDNF増加に関与するという報告があります。