22:妊娠および授乳中にファスティングをしたいという方へのアドバイス
妊娠および授乳中のファスティング施行は推奨されません。
妊娠中は、母体と胎児のために十分な栄養を必要とする時期です。
一方で、ファスティング(断食)は人為的に飢餓状態を誘発するため、生体にとっては緊急事態になり得ます。
「母体優先の法則」というものがあり、妊婦に危険が迫ると、胎児よりも母体を優先的に守ろうとする働きが体内で起こります。ですので、人為的に飢餓状態を誘発するファスティング(断食)は、胎児にとって命取りとなる可能性があります。
例えば、母体にとって有害なものが体内に入ると、胎盤を通じてその有害物質が胎児にも移行してしまうリスクがあります。つまり、ファスティングによって期待されるデトックスで生じた、排出の過程にある有害物質が胎児に移行する可能性があるということです。
同様に、授乳中にファスティングを行うと、排出の過程にある有害物質が母乳を通じて乳児に移行する可能性があります。
したがって、妊娠および授乳中のファスティング施行は推奨されません。
なお、栄養補助の目的で妊娠および授乳中にファスティング用ドリンクを摂取するというのは問題ないかもしれません。ただし、産婦人科の医師から栄養制限などを受けている場合は、担当医に確認する必要があるでしょう
23:甲状腺の機能低下により服薬治療中の方へのアドバイス
ファスティングできるかどうかは、原則として医師の判断が必要です。
甲状腺の機能が低下すると、代謝が低下します。そうすると、心身ともに元気がなくなり、エネルギーを消費しにくく、太りやすい傾向になります。
病的に甲状腺の機能が低下している場合、甲状腺ホルモンを補充する治療薬が医師から処方されることがあります。ホルモンは微量で体内をコントロールするものであるため、その薬が処方されると、定期的な血液検査を要します。それぐらいデリケートな状態にいる方がファスティングできるかどうかは、原則として医師の判断が必要です。なぜなら、ファスティング(断食)は人為的に飢餓状態を誘発し、通常とは異なる代謝経路が活躍することで成り立つものだからです。
もし、医師の判断によりファスティングを行うことができる場合、代謝が低下する甲状腺の機能低下は血糖異常や脂質異常を合併しやすいため、血糖の吸収を穏やかにし、脂質の吸収を妨げるとされる食物繊維が豊富な野菜や茸、海藻類から全部食べ切る「食べる順番」の工夫に取り組んでいただくというアドバイスができるでしょう。ただし、担当医からヨード(ヨウ素)制限を受けている場合、海藻類の摂取については、その担当医に確認する必要があります。
なお、ファスティングを行うことができないと判断された甲状腺機能低下の方に対しても、「食べる順番」の工夫に関するアドバイスは役立つでしょう。